SENSATION[サンサシヨン]

Sensation:印象・感覚・刺激・興奮 Concept:雑草魂 Keyword:20世紀ノスタルジア

四季 その他

私私は書いている時の私私は書いていない時の私書いていない時の私は自分をなんて無能な役立たずの者だろうと思う書いている時の私は必死にがんばるしかなくてたったこれしかできないものかと考えるひとまずゆっくりできるのは自分の書いたものを 読んでいる…

冬から冬へ

友達 ふいに 友達という言葉を思い出すけれど その実感は湧いてこない友達を失ったまま ここまで来てしまった思えば昔 たくさんの友達がいたではないか友達は皆 どこへ行ったのだろう 証言 戦争のことを思えばどんなことにだって耐えられるそうお前は人に言…

仮寓の街

朝まだき 大きな街は まだ眠っている 街は夜の間に 居ずまいを正す そして人々が眼ざめるのを待ち受ける 今朝も人は起きてくるだろう 生命(いのち)あれば 仮寓 窓を開けると 落葉樹の木立が見える その向こうに 一本の常緑樹が立つ 冬になると視界が開け …

夢 私の ただ一つだけの 外部への出口 野ばら en hommage à Mimei 野ばらの咲いた 陽あたりのよい 春のベンチで 青年はショスタコーヴィチが好きだと言った 老人はヴィヴァルディが好みだと返した 二人はこのところの知り合いだった 青年は 楽器を欲しがって…

失われたもの

時間 まだ振り返る時ではない もう少しだけ 時間はあるだろう それはほんの少しかもしれない けれども少なくとも 無ではないだろう 廃墟 その区画に 元は子供もいた ゴミ捨て場のコンクリートに ボール投げをして グラブで拾っていた 夕闇が迫るのも 知らぬ…

幼年時

祭祭は遠くで行われていた八幡さまのお祭だ祖母は私の手のひらに百円札を握らせてくれた私は浴衣を着ていた(祖母の家にあった浴衣だ誰のものということもなく)ただ 祭の夜店を歩いてきたその間に百円札をなくした祖母はそれを聞き(手に持っていたら なお…

掃き出し窓の話

vie

あの頃、父は帰ってくると居間の掃き出し窓を外から開けて、買い物袋を中に入れた。掃き出し窓のあるテラスの側を回って玄関にたどり着く導線の家だった。父はテラスに通勤用のホンダのカブ(バイク)を置いたが、その習慣は通勤の足がホンダの軽に変わって…

葉洩れ日の道

葉洩れ日の舗道 ひと気のない朝の構内を歩く 遠くにいる人を思いながら こんな時 宮澤賢治なら 首にさげた手帳にスケッチしただろうし 『ツイン・ピークス』のカイル・マクラクランなら カセットテープに吹き込むのだろう 今は記録用具が何もない だから自分…

失くしもの

失くしもの 長い冬の間に大切なものを失くした どこで探したらいいかわからない ほんとうはどこかよく知っている だがそこへ近づくことはできない とても寒かった冬だからと言いわけはできない ぎゅっと抱えておけばきっと失わなかった 春というのに氷の道を…

帰れない街

帰れない街 いつかこの街に帰るだろう と私は書いた だが あの街にだけは帰れなかった いくつもの街を転々とした その途中のどこかで ふるさとを喪った

言葉を忘れたカナリヤ

言葉を忘れたカナリヤ 言葉を忘れたカナリヤは ふたたび言葉を取り戻そうと 音のない文字を並べ始めた 無為に過ごした時の刻みを啄む けれど言葉は並んでくれないので 籠の外 木立が風で揺れるのを見 こんどは空を飛ぶことを思い出したが その時は既に もう…

どこかへ

どこかへ 歩いて歩いて その先へ どこまでも来た 見知らぬ町 それがなじみの町となり それでもここは 異邦の町 夜の暗闇に ふと光が差す 誰かがそこで待っている それを頼りに どこへでも歩いた そこで何が待つかも 知らないで それでずっと来たとはいえ も…

雨の詩

雨の詩 屋根裏のない部屋に住んでいた 雨が降り出すと音で分かった 降り出すと窓から雨脚をずっと見ていた 犀星の時雨の詩を実感した 街は穏やかに横たわっていた 雨は本当に脚を持っていたようだ あの辺りから向こうの方へ 雨の幕がゆっくりと動いた なだら…

キリコの朝

キリコの朝 この窓から見える 樹と空と建物 建物の壁に朝日が横殴りにあたり キリコの絵のように照らされている 朝が来た また一つ 命をつないだ 想像の中で 命の限界を知らされ 残された時間をできるだけ有効に そう考えるのは尊いことだろう だがそれは難…

増補改訂 終わらない対話

vie

さよならを言うのが、ちょっとだけ死ぬことだとしたら、死ぬことは、ちょっとだけさよならを言うことではないのか。 札幌に赴任する挨拶に伺った際、帰り際に先生から仙台堆朱の盆をいただいた。自炊生活をする私に、体に気をつけて、と言ってくださった。そ…

野ばら

son

とにかく先生に関する情報は、うわさの形で広まっていた。先生が英語ドイツ語が得意なのは、ブラウニングやリルケを研究していたことから分かっていたが、メーテルランクにも深く入れ込んでいたことから、フランス語もできるのだということになった。ことに…

コタツの話

アルベール・カミュは閉所恐怖症だったらしい。飛行機に乗れなくて、それで日本に来なかったし、『アメリカ・南米紀行』は船旅である。最後は自動車事故で亡くなったわけだが、それはカミュにとっては最悪だっただろう。まあ事故死など、すべて最悪に決まっ…

計機工場の話

学校から帰ると鞄を投げ出し、自転車の前かごにボールを乗せて計機工場へ向かう。北へ行くと左はとうもろこし畑、右はりんご園。それを過ぎると高い欅林があり、やがて精神病院の箱清水から右へ折れて、直進すれば大通に合流する。その角に、木立に囲まれた…

篠竹の藪

家を出て西側にしばらく歩くと河が流れていた。最初その辺りは一面、大人の背丈ほどの篠竹の藪だった。それが河岸まで続いていた。次には、人一人通れる小道が切り開かれた。その道を切り開いたのが父であったかどうか分からないが、たぶん違うだろう。物理…

造成地について

vie

西に向いた河岸段丘の造成地 区画の間にはブロック塀 それを越えればホームランだ 投球 西陽とボールが重なり 瞳 いっぱいに満ちた光の中で 僕は水平にバットを振り抜いた

教会のある風景

河がすぐそこまで来ている公園の 上には教会の尖塔が見えていたはずだ 定時に鐘が鳴らされた憶えがある その鐘の音を「あんじぇらす」と友は詩に書いた 彼は手紙を「友よ」と書き出していた その言い回しを今は借りてみる その友と何十年も会っていないよう…

高原について

駅に着くとすぐに電車が入線した。 目の前に券売機がある。 目的地を探そうと表示を見るが、行こうとする「○○高原」がどこの高原か思い出せない。 区界、遠野、奥新川、面白山、あるいは、ニセコ? 焦っているうちに電車は走り出す。 ……目覚めてからもしばら…

天羽衣

vie

部屋の窓の向こうに伝説の鳥、天羽衣(あまのはごろも)が飛んでいくのが見えた。青空に衣様(ころもよう)の翼を翻(ひるがえ)し。窓の下、丁字路で自転車を引いた母親と女の子がそれを指さしている。それから白鳥。今では住宅が立て込んで丁字路は見えな…

レテルニテ

(とうとう見つけたってさ!) (何を?) (レテルニテ! 夕日と一緒に沈んじゃった海のことみたいよ。) (ああそれは大変だ! 海面をひっくりかえして探さなきゃ!) (『パイレーツ・オブ・カリビアン』みたいに?) (アルテュールくんがずいぶん前に見…

娑婆苦

もしも神さまがいたとしたら 私なんてとっくの昔 地獄の業火で焼かれていただろう (だから神はいないのだ 幸か不幸か) だが身体じゅうに自分の毒が回るのを 毎日 じわじわと感じながら こうして生をつないでいるのも もしかして そうとうに楽な もうひとつ…

時の泡

白樺林の上の方で 剛(こわ)い風が吹く 舗道の木洩れ日が輻輳する 時が泡を立てる その泡を私は飲む またひとつ 齢(とし)をやり過ごした

ル・ソン・アンカルネ

son

ゴールドベルクを聴くとき、人は最も懐かしい場所を想い出すのだ、と思う。「光あれと ねがふとき/光はここにあつた!」(立原道造「アダジオ」)の碑のある古里を、私は想い出していた。 風の通る丘の木かげ。 ゴールドベルクを聴くとき、人は繰り返し、心…

帰省

vie

この街では私は常に何ものかでなければならず そのことが私を疲弊させる あの頃あの街で私はまだ何ものでもなく 私はいつも安心していた だが何ものでもないとしたら人は生きてはゆけない だから私はあの街を出てここへ来た そのときからあの街はふるさとと…

5月の春

遅い花吹雪が舗道に渦を巻く 風の強い北24条通 バスが停まるブレーキの音 向かいのGSでは 洗車のホースが噴水のよう 自転車が新川通へ急ぐ(まだ冬のコート) 変わらない日常の音、音 生きていれば この春の陽差しを浴びることもできる 歩道橋を渡り コンビ…

塀とヨーグルト

寮の隣は高校のグラウンドだった。前には幼稚園があった。(この幼稚園に入るのかな)と、幼心に考えていた。転居したのでそうはならず、転居先の町の幼稚園はいっぱいだったので、結局私は幼稚園には行かなかった(と、最近になって私は父から聞いた)。 グ…